種苗法の一部を改正する法律(令和2年法律第74号)について、すでに登録品種の海外流出防止や産地形成のための措置については令和3年4月1日から施行済であるが、令和4年4月1日からは、農業者による自家増殖についても、育成権者の許諾が必要となった。
カンショについては、現在、栽培されている品種の大半が農研機構によって育成され、品種登録されたものであることから、農研機構では2月7日からホームページで申請受付を開始しており、その内容を抜粋・編集して紹介する。
● 農研機構育成の登録品種の自家用の栽培向け増殖に係る許諾手続きについて (農業者向け)
https://www.naro.go.jp/collab/breed/permission/index.html
対象者について
- 本許諾は、農業者個人又は農地法第2条第3項に定める農地所有適格法人、並びにこれらの者から農地を賃借する方等を対象とするものです。
- 生産者団体等を通じた一括許諾についても奨励しておりますので、個別にご相談ください。
作物別の手続き
「2.カンショ、イチゴ、バレイショ、茶」を参照
- 登録品種の自家用の栽培向け増殖は、申請をいただければ無償で許諾致します。許諾を希望するときは、以下の申請フォームより申し込み下さい。
- カンショ、バレイショについては、正当に入手した種苗そのものから自家用の栽培向け増殖を行うことは、入手後1年間に限り許諾手続きを不要とします。
- 許諾期間は許諾通知の日付から3年経過した後の最初の指定日(カンショ・バレイショは10月31日)とします。許諾期間が満了した日以降も引き続き増殖する場合は改めて申請下さい。
- 農研機構では、サツマイモ基腐病の拡大防止に組織をあげて取り組んでおります。基腐病の発病圃場からは、種イモを採取しない等、基腐病防除にも十分ご留意ください。
- 自家用の栽培向け増殖を行った種苗を他者へ譲渡(有償・無償に関わらず)する場合は、別途団体等を通じた利用許諾の契約手続きが必要となります。
上記のホームページを通じた手続き(フロー)は、以下のとおりである。
- ページ中にある「カンショ申請フォーム」バナーをクリックすると、確認事項や許諾の解除について説明された申請フォームが開くので、メールアドレスを入力して送信する。
- 入力したアドレス宛てに、仮登録の連絡メールが届くので、メールに記載されたURLから本登録フォームにアクセスし、申請内容を入力・送信する。品種名は、メニューから選択する方式となっている。
- 送信されたデータ(許諾申請)に対して、農研機構(知的財産部 育成者権管理課)から許諾承認の通知メールが届く。
手続きは非常に簡単であるので、農業者の皆様には是非、適正な許諾申請の手続きをお願いしたい。
なお、承認許諾に際しての遵守事項等は以下のとおりである。
遵守事項
- 当該登録品種の種苗を用いて得た収穫物を種苗として有償・無償に関わらず第三者に譲渡しないこと。
- 当該登録品種の種苗を海外に持ち出さないこと。
- 収穫物や植物体の一部を種苗として用いる際は、当該登録品種の特性を著しく損なうことのないよう、適切な種苗を選別し利用すること。また、利用した種苗によって本登録品種の特性が損なわれる等の問題が発生した場合には、遅滞なく当機構に報告すること。
- 本許諾に基づき準備した種苗のうち自己の農業経営において種苗として用いなかった種苗は、遅滞なく廃棄又は食用とすること。
- 本許諾に関連する書類やほ場について、必要に応じて当機構が調査することを認め協力すること。
- 第三者から本登録品種の種苗を用いて得た収穫物や植物体の一部を種苗として譲り受けたい又は譲渡したい旨の申し出があった場合は、遅滞なくその旨を当機構に報告すること。
- その他本許諾に関係する事項について当機構の指示に従うこと。
許諾の解除について
以下の場合、農研機構は本許諾を解除できるものとします。
- 利用者が虚偽の申請を行ったとき。
- 本許諾の遵守事項について重大な違反を犯した場合
- 利用者が法人である場合において、他の法人と合併、企業提携あるいは資本関係の大幅な変動により、経営権が実質的に第三者に移動したと認められた場合
- その他前各号に準ずるような本許諾を継続し難い重大な事由が発生した場合
育成者権切れの品種(カンショのベニアズマなど)についての取り扱い等の問い合わせが増えており、今回、Q&Aとして以下のとおり整理したので参考にしていただきたい。
Q1.育成者権切れの品種(カンショのベニアズマやバレイショのキタアカリなど)は許諾を得ずに自家増殖しても良いのか。
A1.権利切れの育成品種には、育成者権は及ばないので許諾申請は必要ない。
Q2.育成者権切れの品種を海外に持ち出して現地で増殖してもよいのか。
A2.権利切れ品種の種苗を海外に持ち出すことは法的には問題ないが、病虫害の拡大や海外産の輸入により日本の農業者の利益を損なうような事態は避けるべきと考えられる。
Q3.出願中・登録品種についての許諾申請の手続きは、農業者個人ではなく、例えば農業協同組合が一括して申請してもよいのか。
A3.自家増殖に係る許諾申請では、生産者団体等を通じた一括許諾も奨励している。その場合の申請事項及び留意点は以下のとおり。
ア)申請事項
代表申請者(または団体)の氏名・住所・連絡先、代表的な栽培圃場の所在地・栽培予定総面積
イ)留意事項
代表申請者は、申請内容に含まれる各栽培者やその連絡先を把握
注:上記の回答は、農研機構知的財産部育成者権管理課に照会して回答いただいた内容を要約している。
参考情報
○自家増殖に関して農研機構に許諾申請を必要とする品種
べにはるか、あいこまち、あかねみのり、アケムラサキ、あまはづき、アヤコマチ、オキコガネ、オリジンルビー、からゆたか、クイックスイート、コガネマサリ、こないしん、コナセンリ、コナホマレ、こなみずき、サツママサリ、すいおう、すずほっくり、スターチクイン、ダイチノユメ、タマアカネ、タマオトメ、ちゅらかなさ、ときまさり、パープルスイートロード、ハマコマチ、ひめあやか、ふくむらさき、べにまさり、ほしあかね、ほしキラリ、ほしこがね、むらさきほまれ、ムラサキマサリ、九育葉2号、九州121号、九州137号、九州138号、ゆきこまち
○農研機構の2022年3月までに権利満了する品種リスト
アヤムラサキ、エレガントサマー、サツマスターチ、サツマヒカリ、サニーレッド、ジョイホワイト、シロサツマ、シロユタカ、スイートライン、ツルセンガン、ハイスターチ、ヒタチレッド、フサベニ、ベニアズマ、ベニオトメ、ベニハヤト、花らんまん、春こがね、農林ジェイレッド
(本記事は、いも類振興情報No.151に掲載された内容を一部改変したものである)